信濃屋の「そば粉で巡る12ヶ月」より
白いそば粉、黒いそば粉、粗いそば粉、違う種類のそば粉をブレンドすることで新しい食感や味わいを作り出すことができます。気候に合わせて身体を労る滋養になるように。または季節を感じながら詩を書くように。そば粉を混ぜて打つことに挑戦してみましょう。
灰白色の麺は喉越し良く、ツルみのある食感にしっかりした穀物の滋味がします。 冷水で締めるともっちりした食感が引き立ちます。 ボリュームのある太切りで穀物の味をかみ締めるのがおすすめです。 新しい年の気分を詰め込んで、揚げた餅、鶏肉、大根おろしと芹を加えた熱々のつけ汁で。 体をいたわるようなそばの穀物らしい懐かしい味が沁みます。 [ 打ち方 ] 加水率44〜46% 粘りがあり、打ちやすいブレンドです。 1月はこね鉢が冷えているのでこねている間に生地が締まってきます。くくりの水加減を少しやわらかめになるようにします。
冷水で締めて食べると、色の濃い見た目とは意外な喉越しの良さに加え、黒と枯草色のホシがアクセント。蕎麦らしい草の香りが噛むほどに口いっぱいに広がります。 一年で一番寒いこの季節はお鍋の〆や湯豆腐ならぬ、「湯蕎麦」で葱や生姜をたっぷり添えてすだちぽん酢で食べてみてください。打ちたてのお蕎麦をお鍋に入れて茹で汁(そば湯)と一緒に、やけどしそうな熱々トロトロを頬張れば「着更着」いらずです。 [ 打ち方のポイント ] 加水率42〜45% くくりの工程前で、小豆粒大のかたまりが集まりづらくても握って硬さが適当であれば、まとめてくくります。(水を加えません) 延し切りは2ミリ程のやや太めが、ボリューム感のある食感でおすすめです。
白い麺の中に黒いほしが大胆に浮かぶが、荒荒しさはなく優しい食感。 仄かに草の香りをさせつつも、たっぷりした甘みが印象的。塩でいただくのも面白い。 雪の中から芽吹く春の野草をイメージしたお蕎麦ですが、 春の山菜の天ぷらと合わせてみれば、相性は抜群です。 ほろ苦い天ぷらをかじれば、こんどはやさしい甘味を期待して蕎麦を手繰る箸がすすみます。 [ 打ち方のポイント ] ポイントはなんといっても水回しとこねです。 こねているうちにそば玉が締まってくるのを見越して、くくる直前で水を追加しておきます。 こねは優しく、大きく変形させずに、はじめから菊練りで丸い玉のまま鉢のカーブでなでながら全体をしっとり仕上げます。 ※水がたくさん入るため、たたみ・切りの際には打粉を特に多めに振ります。
淡く白い透明感のある麺はプリッと弾き返すような弾力。そばのナッツ香が噛むほど口にひろがります。卯月の語源、ウツギの白い花をイメージして作ったそば粉です。 [ 打ち方(追記) ] 加水率は49〜52% 水回しは一回目の加水を多く(8割程度)、くくりでは粒(小石大の塊り)の表面がモチモチぺたぺたしているうちに全体をくくります。練りは大きく変形させながらこねると表面が荒れ割れるので、こね鉢のカーブに優しく押し付けて、内側の水分を染み出させるように丸くこねると表面がしっとりします。硬く締まってきても、柔らかいものを扱う手つきでこねるのがこつです
ほし(粒)の浮かぶ色の濃い麺は喉越しよく、噛むと口いっぱいにそばらしい風味が広がる、野性味溢れるそば粉です。 水回しのときに漂う香りは、5月の活気溢れる深緑の草木土を感じさせます。田舎の田植え風景を想い浮かべつくりました。 [ 打ち方 ] 加水率は43〜45% 粘りが強いため切れ味が重いので包丁のスピードを遅くします。包丁の切れ味が落ちているとなかなか刃が刺さらないことも。粘りの強い黒いそば粉はよく研がれた包丁で切ることをおすすめします。
爽やかな灰白色に小さなほしが浮かぶ。つるみがあるのに、ざらつきも感じる不思議な喉ごしの良さがあります。 喉越しのよさと蕎麦の香り、甘みの強さもバランスよく、梅雨の蒸し暑い季節に食べたくなる冷やかけ蕎麦やざるそばにぴったりです。 [ 打ち方 ] 加水率は45〜48% くくる一歩手前で、ひといき時間をおくとそば玉が締まります。やや柔らかめにまとめるのがコツです。 こね鉢のカーブを使って優しく、丸くこねると表面がしっとりしてきます。細めに仕上げても、太めに仕上げても歯切れよい爽やかな食感です。
淡く透き通る麺に粗挽きの白い粒(ホシ)が浮かぶ、天の川をイメージしたそば粉です。 グリグリっとした食感に甘みとほのかな蕎麦の香り。氷水で冷たく締めたざる蕎麦で、喉越しをお楽しみ下さい。 [ 打ち方 ] 加水率は50〜52% 一回の加水でほぼ全量を入れます。こねは力を入れて変形させずに、丸い形のまま鉢のカーブで撫でるように優しくこねます。 水が多く入る分、のしの終盤からたたみ・切りにかけて水が出てくるので、打粉を多めに振り台にくっつかないようにします。薄めにのし、細切りで透き通る麺をお楽しみ下さい。
濃い色目の麺の中に白や黒のホシが荒々しく浮かびます。盛夏をイメージした、野性味あふれる蕎麦粉です。冷水で締めると喉ごしの良さが増し、噛むと甘皮らしい草の香りが広がります。 蕎麦は疲労回復に効果のあるビタミンB1、B2を多く含みます。味の濃い「葉月」は山芋とろろとの相性抜群です。スタミナをつけて夏を元気にお過ごし下さい。 [ 打ち方 ] 加水率は42〜43% 角の立った切り口のために、水を入れすぎないように注意します。粘りがあるので打粉を多く振って麺帯がくっつかないようにします。延し・切りは1.5mm程がホシのボリューム感が出ておすすめです。
透明感のある、淡い色合いの麺に繊細なホシが浮かぶそば粉です。つるみがありつつもベースに穀物の香りがしっかりとあり、切り幅の太さによって喉越し良くも、噛み締めて味わう面白さもあります。 この季節には外せないアレンジがすだちそば。冷たい出汁にすだちを絞って、または薄くスライスしたすだちを並べます。 じゅんさいを浮かべたお蕎麦に、すだちを絞りました。冷水でキリッと締まる更科系の蕎麦なので、冷やかけにぴったりです。目にも涼しいじゅんさい、すだちの香りを吸い込むと残暑のストレスも一気に霧散します。 [ 打ち方 ] 加水率は48〜50% 水回しでは1回の加水でほぼ全量を入れると失敗がありません。こねは優しく、鉢のカーブを使って丸く表面を磨くようにします。
草の香りのする素朴な田舎風そば粉に粗挽きのホシ(粒)がアクセントになります。見た目からの予想に反してざらつきは控えめ、ねばりがありむっちりとした食感とつるみが楽しめます。 出雲の割子そば風に薬味を散らしてぶっかけ蕎麦。また茹で揚げを水にさらさず、椀に蕎麦湯・つゆ・薬味などを入れる豪快な釜揚げそばもぜひお試しください。 [ 打ち方 ] 加水率は42〜44% 粘りがあり繋がりやすいそば粉です。水が入りすぎると柔らかく伸びてしまい、麺の断面が丸く潰れて食感を損なうので若干バサつくか、硬く感じる程度で加水を止めると角の立った蕎麦が切れます。
深い灰白色の麺の中に浮かぶ粗挽きの粒がアクセント。 喉越し良く、弾力の強い不思議なモチ感のある面白いそば粉です。繊細な甘みと香りが鼻を抜けてゆきます。 この季節は水道水が冷たくなって、氷水を用意しなくても十分に麺が締まり、ざるそばが特に美味しく感じられます。 冷たく締めた蕎麦を熱い鴨汁にくぐらせていただくのも絶品です。 [ 打ち方 ] 加水率48%〜51% 時間をかけて水回しをするとそば玉が硬く締まってきます。 全体の水分量が決まったら粒の表面を磨かないで、表面に粘りがあるうちにくくり、こねていきます。 ※11月は特に一日の時間帯によって湿度が大きく変化するので、加水率に幅を持たせています。
黒いほしが浮かぶ田舎そば。大胆な粒感が楽しめる。冷たいざるそばでいただくと、クリッとした爽やかな歯ざわり歯切れに、チリリとほしの食感が面白い。 熱々のかけそばでいただくなら一度冷水でよく締めてから麺のコシを強くしてから釜の湯にサッと通し熱いつゆを張る。奈川在来の野生味が薬味やボリュームのあるたねものとの相性もよく、年越しそばにももってこいです。 [ 打ち方 ] 加水率50%〜51%