一口にそば粉と言っても、しかも同じ産地・畑の玄ソバでも、石臼の種類や挽き方・ふるい方の違いによって全く違う個性の食感や風味のものができます。
そば打ちする際の粉の特性もそれぞれ違います。
それぞれのそば粉について、快適なそば打ち・美味しい打ち方のコツやヒントを集めました。
加水率:44%〜47%
水を2回に分けて入れるのがポイントです。1回目:全体の7〜8割ほど 2回目:のこりの2割(微調整分を残して) +α微調整。
小刻みに恐る恐る水を足すとその間蒸発が進んで、正味に必要な水の量がわかりづらいので、1回目の水回しでたくさん入れ、全体をパン粉状になるまでよく揉みます。そば打ちで一番大事な水回しがうまくいっているかどうか見極めるポイントになるのが、一番小さな粒の大きさです。8割水を入れて一番小さな粒=粉の場合、全体に水分が回っていません。乾いた粉のままで水分を吸っていない所が蕎麦切れを起こす原因になります。手を動かすスピードが遅い、同じ場所に留まって全体をかき回していない、などが考えられます。
湿った粒と乾いた粉を手の中で合わせて圧力をかけるようにして、湿った粒から粉へと水分を移して、全体を均一にします。
そば粉「特選」は打つのにクセがなく打ちやすいそば粉ですが、季節によって加水量が変わることに気をつけます。 必要な水の量は気温が高いと少なく、気温が低いと多めになります。 特に冬場はこね鉢が冷えていたりすると、そば玉が固く締まります。 季節や気温によって加水量を変える方法がある一方、加水量を一定にして夏には冷水を用い・冬にはぬるま湯を用いて麺帯の温度を調整する方法があります。特特選|石臼挽きそば粉の購入ページはこちら
加水率:36〜41%
そば粉「特青菊」を美味しく打つには加水量を見極めることがポイントです。 水溶性タンパク質を多く含むそば粉のため、つながりやすい一方、 粘りの強さから来る、練りが重い感覚を「硬い」と感じ水を足しすぎると歯にくっつくような食感になってしまいます。 水回しの最終段階で水の量を決めるとき、全体が同様に小石大から拳大の塊にを大きくしていく「撹拌造粒」の方法が目安になりますが、そば粉「青菊」の場合は粘りが強いせいか不規則な大きさの塊ができ、小石・拳大の塊ができる一方で小豆粒大やもっと小さなものも依然としてあります。それらをまとめるために水を加える前に小さなものをつまんで硬さをチェックします。小さな粒でも硬さがよければひとまとめにして捏ねてOKです。 また、こねるときもそば玉の粘りが硬く感じるときは水を加えるのではなく、 いつもよりテンポを落として、体重をかける時間をゆっくりにします。 包丁も力任せに刃を押し込むのではなく、刃が蕎麦の麺帯に刺さるのを待つように切ることで、ストレスなく切ることができます。粘りの強い蕎麦粉を打つときは切れ味の良いそば包丁を使うことも方法のひとつです。そば包丁は切れ味が良すぎてはいけないといいますが(切る→傾けることでまな板に刺さった刃が折れるのを避けるため)、切れ味の良い包丁が作る断面の鋭さで、味わいが変わるのもそば打ちの楽しみのひとつかも知れません。特青菊|石臼挽きそば粉の購入ページはこちら
加水率48〜50%
更科がベースのそば粉「特白菊」をうまく打つには水回しのスピード(手の速さ)と捏ねの柔しさが一番のポイントです。 通常、そば打ちの水回しは2回から3回に分けて水を加えますが、 白菊の場合、微調整分を残して一度で水の全量を加えます。全体に水がかかるように水を加え、そば粉全体を鉢の底からあおりながら、特選を打つときの2倍くらいのスピードで速く手を動かしながら全体に水を行きわたらせたら、 鉢に押し付けて圧力をかけて塊を作って、※すぐにひとつにまとめます。 こねるときはやさしく、丸い形を割らないように始めから菊練りで丸く捏ねます。 地のしまできたらあとはいつもどおり。 成功すると地のしの際、生地が急にしっとりしてきて、延しているあいだにこねが回って全体がこなれてきます。 失敗してボロボロになってしまった場合の裏技として、ビニール袋に入れて20分ほど放置します。 するとボロボロの塊の表面に水が浮いてきて、塊と塊がくっつきます。※印まで戻って、優しくこねるところから再チャレンジできます。 また、水のかわりに湯を使うと比較的楽にに打つことができます。秘伝の温度は「飲めるくらいの白湯」です。特白菊|石臼挽きそば粉の購入ページはこちら
加水率50%〜
挽きぐるみは粒の大小の分布が広く、大きな粒がたくさん入っているため繋げるのが難しいそば粉です。ポイントは水回しと練りで粘りを引き出すことです。とくに2回目の加水後撹拌造粒を丁寧に、力で押し集めず粒の表面の粘りで自然にまとまるように根気よく加水します(大きな粒に水が再吸収されるのを待ちます)。ひとまとめにしてこね始めると荒れた表面をしていますが、(棒練りをせず)菊練りで鉢のカーブを使って撫で付けるようにこねていくと、だんだん粘りがでて糊のように大きな粒を繋いでいきます。粘りに抵抗して力を入れるとそば玉の表面にひび割れがおきます。粘りに任せてバラバラのものを一つに集めるようなイメージで、そば玉の中心に向かって粒を寄せるをイメージでゆっくりこねるのがポイントです。挽きぐるみ|石臼挽きそば粉の購入ページはこちら
玄挽きは玄ソバを殻ごと挽きこみ、 喉に引っかかる尖った粒だけをとりのぞいた極粗挽きの全粒粉です。 殻の粒が大きいためそばの風味が強く粒感も荒々しく、ごつごつした食感になります。 また、黒い粒が包丁にぶつかって切りにくいため二八にするなら細く長い蕎麦は望めません。 当然、太く・野性的な蕎麦が出来上がります。 そこで、太切りにしても2分半以内にに茹で上がるよう、こねは優しく・加水は入れすぎず、軽く打つようにします。 蕎麦を茹でるとき火の通り加減はお好みですが、茹で時間は手打ち蕎麦なら2分半以内。 2分半以上茹でると蕎麦がお湯を吸って味・食感ともにぼやけた印象になるからです。 また、この黒い粒のコントラストを生かして白い蕎麦をベースに少量ブレンドすると、白く透明なベースにくっきり黒いほしが浮かんだ蕎麦になります。食感もなめらかで喉越しの良い白の蕎麦にチリリと大粒のほしが楽しいリズムです。 強烈に個性的な粉であると知ることが、石臼挽きそば粉玄挽きの打ち方のコツです。玄挽き|石臼挽きそば粉の購入ページはこちら
加水率50%〜
更科そば粉を打つポイントは湯練りの際の水回しの手早さと、塊を作る力の強さです。 そば粉とつなぎは別々に分けておきます。(小麦粉のたんぱく質が60度以上の湯で変性するので) まずそば粉だけに沸騰した湯を注ぎ、しゃもじを使って手早く全体に熱湯をまわします。 このとき、鉢の中身を大きくひろげるとそば粉と湯の温度が下がってしまうので、 できるだけ小さな山のまま作業します。 手が入れられる温度になったらつなぎを入れ(変わりそばの材料もここで入れます)、大急ぎで全体をまんべんなく混ぜたら、 鉢に押し付けて塊を作っては、やがてひとつにくくります。このときのポイントは鉢の底を使うのではなく、鉢の立ち上がりの部分・特に自分に近い斜面で、つかんだ塊をすり潰すようにすると 、中から水分と粘りが出て塊同士がくっつきます。力が足らないとボロボロと崩れてくっつきません。これを全体が冷めないうちに作業します。 練りは垂直に体重をかけて力強く練ると急にそば玉が柔らかくなり、それが練れている合図です。 鉢を斜めに傾けて設置し、力が伝わりやすいようにするのもよい方法です。 こねが終わったらラップにそば玉をつつんで、冷めるのを待ちます。温かいまま地のしをすると表面が熱で乾燥して生地の表面がバリバリに固まり、ひび割れたり、伸びない原因になります。
更科そば粉に香味などを加えて変わりそばを打つ場合は、加える素材の持つ水分量に気をつけます。大葉や柚子などの生の素材の場合は特に気にする必要ありませんが、抹茶などの乾燥物の場合は水を吸収するため、加水量を多くします。さらに気をつけなければいけないのは抹茶もいろいろなグレードがあり、加えるべき水の量は抹茶の重量×2〜5倍と大きな幅があります。更科そば粉の購入ページはこちら